Category: Japanese Articles

松前健『出雲神話』

講談社学術文庫、2024年、原著は1976年の講談社現代新書。解説で述べられているとおり、出雲神話研究は、1980年荒神谷遺跡、1996年加茂岩倉遺跡、2000年出雲大社地下の巨大杉柱発掘によって大転換しており、本書は「それ以前」の研究に属する。

1 出雲神話の謎
2 二つの出雲神話
3 出雲国造家の台頭と自家の売りこみ
4 スサノオの神話
5 オオナムチの神話
6 国譲り神話と諸氏族
7 出雲土着の神々
解説 三浦佑之

「出雲は、けっして畿内、大和より古い文化の母胎でもなければ、大和朝廷の成立以前に栄えていた「出雲朝廷」の根拠地でもなかった。七、八世紀のころ、医療・禁厭の法や託宣などを、各地に持ち伝えたシャマニズム風の民間宗教の、いわば本源地・中心地であって、出雲大社はその総本山・総本社というべきものであったのであろう」(48)。という、「出雲信仰は新興宗教」説。

本書のまとめは191~194頁にまとめられている。「出雲神話には虚像と実像とがある」というのは、当たり前といえば当たり前。ここでも解説が述べているとおり、記紀・風土記以前、弥生時代にさかのぼる遺跡群に確かめられる出雲文化の存在をどのように説明するかが本書には欠けていて、たんに素朴な伝承の世界とだけ位置づけられている。もっとも、そうした原・出雲神話の実在すら認めない論者もかつてはいたわけで、その点が当時における本書の特色ではある。

本書をみると、神話研究としてはやはり、記紀・風土記の記載事項から、大和朝廷側の要素と出雲地域側の要素とを選りわけるという作業になってくるが、それはなかなか難しいという印象。出雲神話「以前」に関心が集中しがちだが、根拠のある歴史を組みたてようとするなら、もっと「以後」のところをたどることも大事と思う。

[J0628/260102]

秋元松代『氷の階段』

朝日新聞社、1979年。劇作家である著者のエッセイ集。

「伝説と創作」は、土佐の「七人みさき」の風習に出会ったときの話。著者はのち、これを題材にとった戯曲を書いている。

「氷の階段」は立石寺訪問記で、ムカサリ絵馬という名称は用いていないが、婚礼を描いた絵馬のことに触れている。

国立国会図書館デジタルコレクション(個人送信サービス)
> 秋元松代『氷の階段』
> 秋元松代『七人みさき』

[J0627/251219]

齋藤純一・谷澤正嗣『公共哲学入門』

副題「自由と複数性のある社会のために」、NHKブックス、2023年。もともとは講義の教科書とのことだが、いいかんじの概説。前半が学説解説、後半がイシューごとの説明となっていて、とくに後半はごく薄くではあるけど、紹介という目的には即している。「ありがたい、助かる」のカテゴリーに入る一書。

公共哲学は何を問うのか
公共哲学の歴史1
公共哲学の歴史2
功利主義の公共哲学
リベラリズムの公共哲学
リバタリアニズムの公共哲学
ケイパビリティ・アプローチの公共哲学
平等論と公共哲学
社会保障の公共哲学
デモクラシーの公共哲学1
デモクラシーの公共哲学2
フェミニズムの公共哲学
国際社会における公共哲学

新しい動向を手びろく見渡しているのは強み。基本理論については、ロールズやセンの記述にも通りいっぺんの紹介以上のことが含まれているのと、ハーバーマスの説明に一節を充てて比較的手厚い。知らないだけかもしれないけど、これくらいの分量のハーバーマス紹介って、実はあんまりないような気がする。

[J0626/251215]