Russel T. McCutcheon, Studying Religion: An Introduction, 2nd edition, London, Routledge, 2019. 第一版は、2007年。ざくっと眺めただけど、なかなかおもしろそうだったのと、巻末の人物紹介が有益と思ったので、この記事を書こうかなと。

第二版のための前書
イントロダクション:宗教研究とは何か
1. 名前の下にあるものとは?
2. 「宗教」の歴史
3. 宗教の諸本質
4. 宗教の機能
5. 諸宗教のあいだの類似性
6. 宗教についての公的な諸言説
7. 宗教とインサイダー/アウトサイダー問題
8. 宗教と分類
あとがき
ジョナサン・Z・スミス「必要な嘘:諸学における欺瞞」
K・メリンダ・シモンズ「誠実は最高の教育」
用語集
研究者たち
参照文献
資料
索引

この本は、あれこれの宗教に関する入門書ではなくて、あるものを「宗教」と名づけることはどういうことなのか、そこにはどういう問題があるのか、という問題を扱った入門書。いわゆる脱構築の話ってむだに(?)難解なことが多いが、この書はたとえ話をたっぷり使って平易に書いてある印象。邦訳があるといいな。自分ではしないけど。

巻末に、70ページにおよぶ、主要な宗教研究者のリストと解説があって興味深かったので、列挙と一部メモ。

  • Willam E. Arnal: キリスト教の起源の問題を社会理論の立場から扱う。
  • Talal Asad
  • Catherine Bell (1953-2008): 儀礼論と方法論。
  • Pascal Boyer
  • Willi Braum: 起源問題の社会理論、神話やレトリックの社会的・政治的機能、歴史理論。
  • Wendy Doniger: インド研究が基礎、人間主義的アプローチ。
  • Mary Douglas (1921-2007): マッカチョンはダグラスに大きな影響を受けているようで、この本は彼女に献げられている。
  • Daniel Dubuisson: フランスにおける宗教概念批判論の担い手のひとり。
  • Emile Durkheim (1858-1917)
  • Diana L. Eck: 宗教間対話について仕事。
  • Mircea Eliade (1907-86)
  • James G. Frazer (1854-1941)
  • Sigmund Freud (1856-1939)
  • Clifford Geertz (1926-2006)
  • Eddie S. Glaude: デューイ研究、アフリカ系アメリカ人の宗教史。
  • David Hume (1711-76)
  • William James (1842-1910)
  • Kim Knot: ヒンドゥー教、新宗教運動、世俗主義や宗教間対話。この書でもかなり重要性が与えられているかな?
  • Bruce Lincoln: 神話や儀礼、宗教概念批判論の立場から。
  • Burton L. Mack: 初期キリスト教や正典。
  • Martin Marty
  • Karl Marx (1818-83)
  • Tomoko Masuzawa
  • F. Max Mueller (1823-1900)
  • Rudolf Otto (1869-1937)
  • Hans Penner (1934-2012): エリアーデの同僚として、神話や儀礼を研究。
  • Friedrich Schleiermacher (1768-1834)
  • Ninian Smart (1927-2001)
  • Huston Smith (1919-2016): 世界の諸宗教や宗教間対話。
  • Jonathan Z. Smith (1938-2017)
  • Wilfred Cantwell Smith (1916-2000)
  • Herbert Spencer (1820-1903)
  • Rodney Stark
  • Paul Tillich (1886-1965)
  • Edward Burnett Tylor (1832-1917)
  • Gerardus van der Leeuw (1890-1950)
  • Max Weber (1864-1920)
  • Ludwig Wittgenstein (1889-1951)
  • Linda Woodhead

入門書で誰を取りあげるかって、本当に「政治的」な営みだと感じる。誰が挙げられているかに加えて、誰が挙げられていないかを確かめてみるのも一興かも。たとえば、現代宗教社会学からはあまりエントリーがないけれども、なぜかロドニー・スタークとリンダ・ウッドヘッドの名前が挙がっている。マルクスはあっても、トレルチはない。スペンサーはあっても、コントはない。ダグラスは推されていても、へネップとかターナーとかもない。認識の問題関係で、ヴィトゲンシュタインを入れるなら、レヴィ=ブリュールやグラネあたりがあっても良いというのが正論のはずなんだけど、まあ入れないよね。立場のちがいを説明するのが面倒だろうしね。
[J0197/210911]