Category: Japanese Articles

A. フリシュ『叙任権闘争』

野口洋二訳、2020年、ちくま学芸文庫、原訳書1972年、原著1946年。

第1章 教会法的伝統と俗人による簒奪
第2章 教会の反撃
第3章 グレゴリウスの法規
第4章 世俗諸君主の反対
第5章 グレゴリウス七世時代の叙任権をめぐる議論と論争
第6章 ウルバヌス二世の教皇在位期(一〇八八‐一〇九九年)
第7章 十二世紀初頭のイギリスとフランスの叙任権闘争
第8章 ドイツの叙任権闘争 一一一一年の危機
第9章 ヴォルムスの協約
第10章 教会の解放

背景の知識がなさすぎて、厳しい・・・・・・。カノッサの屈辱が、宗教的な赦しとして教会の権威を高めた一方、政治的な見地からすれば否定的に評価されるとか、頭に残ったのはそれくらい?人名もなじみがなさすぎる・・・・・・。

専門分野外すぎたが、こういう本が、文庫で再版されるちゅう状況を喜びたい。

[J0090/200923]

吉田裕『兵士たちの戦後史』

岩波現代文庫、2020年、原著は2011年。

序 章 一つの時代の終わり
第一章 敗戦と占領
第二章 講和条約の発効
第三章 高度成長と戦争体験の風化
第四章 高揚の中の対立と分化(1970年代‐1980年代)
第五章 終焉の時代へ
終章 経験を引き受けるということ

著者には『日本人の戦争観』(1995年)という著書もあるが、本書は戦争観一般ではなく、戦争体験の語りの歴史を辿る。つまり、たんにあれこれの戦争体験を紹介するのではなく、時代ごと・目的ごとに異なる戦争体験の語りのあり方を、できるだけ広い文脈に置いて整理しようとする。戦争体験の問題を考える上で、最初に手に取るべき一冊と言える。

そうした内容面での価値とは別に、可能なかぎりの「客観性」を堅持しつつ、リアルな情報を手を尽くして集めて整理していく様子に、著者の執念をひしひしと感じる研究でもある。

1954年生まれの著者は、「あとがき」でこう漏らしている。「思春期、青年期の私は、なぜあれほど無慈悲に、父親の世代の戦争体験に無関心、無関係を決め込んでいられたのだろうか」(347)。

もちろん著者自身は、そこから来る「負い目」を背負い、もっとも良心的に責任を果たしてきた人物のひとりにちがいない。また、私が属する団塊ジュニア世代ないし氷河期世代の人間が、日本の戦争問題にきちんと向き合ってきたとは、1ミリも思えない。それでも、ポスト団塊世代として著者が自省を込めて述べている、ポスト団塊世代や団塊世代の人たちに今も見られる戦争体験に対する「無慈悲」「無関心」は、改めて奇異に見える。彼らには、「”戦争”はまだ、手をのばせば、とどく所に”転がっていた”」のに。「戦争を知らない子どもたち」などという言葉は、その流行当時は意味があったろうと思うが、それから50年を経てまだ平気で「知らない」と言うのであれば、醜悪でしかない。この世代から、吉田さんのこの著書のような仕事がまだこれからどれだけ出てくるだろうか。私たちの世代は世代で――もう「若く」はないのだし――、自分たちの立場の上で、吉田さんたちの仕事を嗣がねばならない。

[J0089/200918]

覚えておこう、H・マーティノー

ちょっとした成りゆきで、ハリエット・マーティノー(1802-1876)なる人物を調べることになったが、あと50年も経てば、E・B・デュボイスあたりとともに社会学の教科書に必ず載るようになるのではないか。下記の本で「忘れられた社会学者」と書かれたのが2001年、それから20年が経過しているから、海外ではすでに再評価も進んでいるのかもしれないが、日本ではまだのように思う。

マーティノー再評価をめざした下記の論集のタイトルを眺めるだけでも分かるとおもうが、いろんな角度で有望な鉱脈すぎる。ジェンダー、障害(晩年唖者になっている)、アメリカ論とその人種主義批判、経済思想、ユニテリアンやコント流の実証主義との関係、さらにナイティンゲールとも繋がりがあったとは。

Michael R. Hill and Susan Hecker-Drysdale, Harriet Martineau: Theoretical and Methodological Perspective. (Routledge, New York, 2003[2001]).

イントロダクション
第1章 教室で、その外で、マーティノーを真剣に取り上げる
第2章 マーティノーとユニテリアンとの関係
第3章 レモネードをつくる:唖者になったマーティノー
第4章 マーティノーとトクヴィルの方法論的比較
第5章 「事物」の意味:マーティノーとデュルケームの理論と方法
第6章 「仕事を語る」:マーティノーによる仕事と職業の社会学I
第7章 「仕事を語る」:マーティノーによる仕事と職業の社会学II
第8章 ナイティンゲールとマーティノーの共同作業
第9章 マーティノーとコントの実証主義
エピローグ マーティノー社会学とこの分野の未来 

[J0088/200914]