副題「都会と田舎の間に出現した新しい社会」、朝日新書、2013年。

現在篇 地方にこもる若者たち
 若者と余暇―「ほどほどパラダイス」としてのショッピングモール
 若者と人間関係―希薄化する地域の人間関係
 若者と仕事―単身プア/世帯ミドルの若者たち
歴史篇 Jポップを通して見る若者の変容
 地元が若者に愛されるまで
未来篇 地元を開く新しい公共性
 「ポスト地元の時代」のアーティスト
 新しい公共性のゆくえ

9年前のこの本を、なぜかこのタイミングで読む。前半は岡山市での若者調査、後半はJポップの歌詞分析。

「商店街とは、若者にとって、地域社会における人間関係を学ぶ場所であるとともに、「よく分からない人」に出会わないと生活必需品を手に入れることができない「ノイズ」だからの場所でもあった」(52)

「もともとヒップホップとは黒人音楽で、仲間との絆や地域性を重視してきた音楽であった。だから、00年代、日本の若者文化のなかで「地元」のもつ意味が大きくなるに従って、ヒップホップの人気が高まっていったことは必然であった」(136)

「もはや若者たちに、そこから外れなくては生きていけないほどに強力に画一的な生き方を押しつけてくる「完成された社会」はない。しかしそこでは、「好きに生きていい」と言いつつ、「自己責任」の名のもと若者たちをほったらかしにしている現実がある」(170)

「みんなで議論するより有能な指導者に任せたほうが社会は良くなるか?」という質問に対する回答より、「20代の女性は「みんなで議論をすること」に対して極めて肯定的な姿勢を示しているのに対し、20代の男性は真逆の姿勢を示しているのである。現在の若者は、男性は極めて権威主義的であり、女性は極めて反権威主義的な傾向があると考えられる」(176)

「集団の成員の多様性の高まりにより、「空気を読む」ことは次第に困難になりつつある。だから、若者たちは「空気を読む」ことに必死になる。……今の若者は、多様性の高まった、「決まった空気」がない状態を生きている。まずは、このことを理解しなくてはならない」(181)

[J0274/220625]