『社会学評論』74巻1号、2023年、86-103。
1985、1995、2005、2015年実施のSSM調査を用いて、性役割意識の変動の実際と、その変動をもたらした要因を探る。
「女性全体と有配偶者女性では、本人の高学歴化や専門・管理職の増加が性役割意識の平等化に寄与したという説が支持された。一方、男性全体では、未婚化と母親の正規雇用増加が平等化に寄与したという説が支持された。有配偶男性では、母親の正規雇用増加に加えて、妻の高学歴化と専門・管理職増加の説が支持された」(99)
「……そこから浮かび上るのは、高学歴化や女性労働力率の上昇が性役割意識の平等化を単純に帰結するというよりも、学歴・仕事・家族に関するさまざまな社会的地位の構成変化が、ジェンダー差をともないつつ、時には本人以外の重要な他者の影響も反映しながら性役割意識を変化させていくという複線的な経路を通じた価値変容の姿である」(99-100)
「全体としては戦後生まれ以降、世代間で性役割意識に差はみられなかったが(総合効果)、「社会的地位の構成変化による平等化」(間接効果)を統制すると、女性では新たな世代で性役割分業を肯定する直接効果があらわれた」(100)。より具体的には「社会的地位を統制すると、1945-54年出生世代に比べて1965年以降出生世代で性役割分業を肯定する傾向があらわれる……」(98)という。ただし、こうした傾向は、女性全体の値としては、社会的地位の構成変化と相殺されるという。一方、男性には「ゆりもどし」の効果はみられないらしい。
[J0382/230713]
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