Category: Japanese Articles

五来重『山の宗教』

副題「修験道入門」、角川ソフィア文庫、2008年。1991年に角川選書として出版、もともとは1979年の講演ということでいいのだろうか。

第1講 熊野信仰と熊野詣
第2講 羽黒修験の十界修行
第3講 日光修験の入峰修行
第4講 富士・箱根の修験道
第5講 越中立山の地獄と布橋
第6講 白山の泰澄と延年芸能
第7講 伯耆大山の地蔵信仰と如法経
第8講 四国の石鎚山と室戸岬
第9講 九州の彦山修験道と洞窟信仰

歴史に強く仏教にも強い民俗学者、五来重。たんに素朴な自然崇拝でもなければ、画然としたひとつの宗教でもない修験道とは、そういう人でなければ語りにくい対象だと言える。自由自在に山岳信仰を語っているが、もしこれが講演録だとしたら、どの程度準備したものだろうか。もしすべて頭の中に入っているというのなら凄すぎる。

全国各地の山岳信仰を扱っているが、肝心ともいえる吉野・大峯を扱ってないのはなにか理由があるのかどうか。

文庫版オリジナルの解説だろうか、4ページほどの短文だが、山折哲雄氏による五来重評がめちゃめちゃかっこいい。

[J0429/231128]

小沼大八『伊予のかくれキリシタン』

愛媛県文化振興財団、えひめブックス、1998年。

1.キリスト教伝来
2.キリスト教受容
3.キリシタン弾圧の始まり
4.徳川初期のキリシタン
5.キリシタン禁制
6.伊予のキリシタン
7.禁教令以後の伊予のキリシタン
8.伊予のかくれキリシタン
9.かくれキリシタンの信仰
10.浦上四番崩れ

著者はもともと哲学の方らしいが、この本では、愛媛のキリシタンの存在を追う。とにかく記録が乏しいなか、それだけに数少ない手がかりがとても神秘的に見えてくる。たとえば、能島海軍・村上武吉が自由通行の許可の代わりに宣教師から受け取ったという、ギヤマンの徳利と杯(村上海賊ミュージアム蔵)。豊後から逃げてきた一条兼定が寄寓した現大洲市の平地から掘り出されたキリスト像。同じく平地の、十字が刻まれた妙見祠堂。肩口に十字紋をもつお大師さまの像など。伊予のキリシタンは江戸時代、次第に姿を消していったらしいが、それを「安楽死」と呼んでいるのだけはいただけない。意味もよく分からないし、もっと別の表現があるでしょうよ。

[J0428/231127]

篠原匡編『TALKING TO THE DEAD』

蛙企画、2022年。写真、和多田アヤ。

青森のイタコやその周辺の現在を撮った写真集風の1冊で、執筆陣は山折哲雄氏や島薗進氏、鵜飼秀則氏らとたいへんに豪華。

主なコンテンツ
①中村タケさん口寄せの全文
②中村タケさん インタビュー
③イタコの唱え言解説イタコとは何か(郷土史家、江刺家均氏)
④「最後のイタコ」松田広子さん インタビュー
⑤日本人の信仰とその歴史(正覚寺住職・宗教ジャーナリスト・鵜飼秀徳氏)
⑥日本人の霊魂観(宗教学者、山折哲雄氏)
⑦科学とスピリチュアリティ(宗教学者・島薗進氏)
⑧川倉賽の河原地蔵尊住職・佐井川智道氏インタビュー
⑨存在の彼岸(ジャーナリスト・作家・金田信一郎氏)

しかし、盲目のイタコはもう、90歳の中村タケさんおひとりだけとのことで、写真集を出すにはさすがに時期を逸しており、内容には水増し感がなくもない。解説には英語対訳がついていて、英語話者にはいいかも。あと写真の中では、川倉の地蔵道の化粧地蔵のところは折り込みになっていて迫力がある。

[J0427/231121]