Category: Japanese Articles

デイヴィッド・ライアン『パンデミック監視社会』

松本剛史訳、ちくま新書、2022年.

第1章 決定的瞬間
第2章 感染症が監視を駆動する
第3章 ターゲットは家庭
第4章 データはすべてを見るのか?
第5章 不利益とトリアージ
第6章 民主主義と権力
第7章 希望への扉

監視社会論で名を知られているライアンの、コロナ社会論。すごく新しい見解があるとまではいえないが、監視社会の観点からコロナ・パンデミックを捉えると、これだけ論点があるよという総覧としては役に立つ。

ひとつ、とくに重要な観点とおもうのは、それぞれの国家の統治体制との影響関係で、本書ではとくに中国の動向に留意されている。

[J0288/220820]

立花隆『サピエンスの未来』

講談社現代新書、2021年。

目次
すべてを進化の相の下に見る
進化の複数のメカニズム
全体の眺望を得る
人間の位置をつかむ
人類進化の歴史
複雑化の果てに意識は生まれる
人類の共同思考の始まり
進化論とキリスト教の「調和」
「超人間」とは誰か
「ホモ・プログレッシヴス」が未来を拓く
終末の切迫と人類の大分岐
全人類の共同事業

1996年の東京大学での講義をもとにした本という。8割がた、テイヤール・ド・シャルダンの紹介のような内容で、立花隆がこんなにシャルダンに入れ込んでいたとは知らなかった。そういえば、30年前に読んだ『宇宙からの帰還』にも精神圏の話なんかがあったような気もする。

シャルダンはいわゆる科学の枠組みに収まらないところがあり、昔ブームだった人と思われているかもしれないけど、最近よく読まれているあれこれの人類史よりはずっと興味深いと思う。

[J0287/220815]

高橋佐太郎『草分け運転手』

副題「自動車と五十年」、平凡社、1958年。「人間の記録双書」の一冊。

上京
 木札の運転免許証
 エンジン年生れの男
 父のくれた大型銀貨
草分け運転手
 星子さんに弟子入り
 塩原で乗合バス
 ハイヤー運転手
 金ピカ服着せられて
 ビール王と花柳界
 たった今クビだ
 ズウズウ弁の高橋
 吉原細見
 仲之町芸者栄太郎
 金沢で自動車問答
 仮祝信
 世も明治
独立開業
 熱海へ初ドライヴ
 粋な大正運転手
 貸切自動車開業
 独立・結婚
 商売繁昌
 侯爵の使者
 しのびよる危機
 新天地への夢
帰郷
 関東大震災
 東京よさようなら
 無資本でバス開業
 無尽の金が命の綱
 ストライキ寸前
 バス経営七周年
 自動車父子二代
自動車よ信号は青だ
 高嶺の花
 日産からの誘い
 終戦
 GHQで情報キャッチ
 六十一歳の抵抗
 国産車販売に専念
 トヨタ精神
 月賦時代の到来
 渡米前夜
 アメリカの自動車界
 生れてはじめての大病
 待てど来ぬ神武景気
 自動車よ信号は青だ
年譜・高橋巌
あとがき・高橋功

高橋氏の人生は、きれいに三部構成になっているようで、東京での運転手時代、帰郷しての盛岡バス創業時代、ディーラーとしても活躍した時代と。1885年に、現在は北上市となった鬼柳村に生まれ、後上京。貿易商箕田長三郎やビール王馬越恭平のお抱え運転手を務める。1924年には岩手に戻って市街バス事業を開始する。

読んでいておもしろいのは、運転手時代。大正時代は、自動車運転手は使用人でありながら、芸能人のような人気だったそうな。高橋氏は容姿もよかったらしく、運転手時代の記述は半分ぐらい花柳界の話である。

『草分け運転手』NDL ONLINE
>「人間の記録双書」について

[J0286/220813]