Month: March 2022

金井利之『コロナ対策禍の国と自治体』

副題「災害行政の迷走と閉塞」、ちくま新書、2022年。

序章 コロナ元年
第1章 災害対策と自治体
 1 災害行政組織の特徴
 2 災害行政対応の特徴
第2章 コロナ対策禍と自治体
 1 追従・忖度から放縦へ
 2 排除と鎮静
 3 折衷と流行
 4 非難応酬
第3章 コロナ対策の閉塞
 1 三すくみの閉塞―蔓延防止・医療提供・生活経済
 2 玉突きの閉塞
 3 仮想対応の閉塞
 4 生活・経済・財政の閉塞
 5 公表と差別の閉塞
終章 コロナ三年

国や行政による新型コロナ対策自体が「コロナ対策禍」を引きおこす、その実態やメカニズムを記述・分析。2021年5月出版の本なので、新型コロナ対策・約1年間の記録となっている。

斜め読みも斜め読みなので、書評というより印象だが・・・・・・。網羅的でかっちりとした記述で、新型コロナ対策を材にとった、行政学のテキストブックのよう。この本単独で読みとおすのはなかなか骨が折れそうが、たとえば別の国や組織のケースであったり、別の出来事のケースなどと比較検討する意図をもってこの本に当たると、役に立ちそうな気がする。

[J0246/220305]

八雲=ハーン関係書

小泉八雲=ラフカディオ・ハーン、日本関係の著書はひととおり読んだことになったかと思うので、関係書とあわせて記事一覧を作成。書籍化されていないテキストはまだ、あるいは、まだまだあるはず。

上のリストはこのブログの記事リストだが、『日本瞥見記』(1894年)は恒文社の上下巻でちょくちょく読むので、逆に記事にしていない。この本、ドイツ語版では IZUMO というタイトルになっているように、明治期の出雲風土記となっている。このほか、代表的な再話物語集『骨董』(1902年)・『怪談』(1904年)もあるが、こちらは講談社学術文庫版が、原案になったテキストも掲載してあって良い。

ウィキペディア日本版では、”A Living God”(「生神」、別名・稲むらの火、1896年)が著書のように掲げられているが(2022年3月時点)、 これは『仏の畑の落穂』の一篇。わかりにくし。

また、以下は関連本の記事リスト。

小泉八雲『天の川幻想』

船木裕訳、集英社、1994年。

天の川縁起
 天の川縁起
 鏡の乙女
 妖怪の歌
 日本からの手紙
 伊藤則資の物語
 究極の問題
虫の研究・蚊
日本お伽話
 ちんちん小袴
 団子を失くしたばあさん
 化け蜘蛛
 猫を描いた少年
 若さの泉.
『天の川縁起』序文(フェリス・グリーンズレット)
思ひ出の記(小泉節子)
解説(船木裕)

ハーン死後、1905年に出版された遺稿集、The Romance of the Milky Way and other studies and stories に収録された文章を中心に編まれた一冊。ただし、The Romance of the Milky Way… の中でも、「事実は小説よりも奇なり」一篇と、「妖怪の歌」のうち「狐火」は収録されていないらしい。せっかくなら全部入れてほしかった。5篇収められた「日本お伽話」はもともと縮緬本で、そのあと、Karma and Other Stories and Essays (1921) に収録されたものとのこと。

雑多といえば雑多な内容だが、ハーンの作品をひととおり読んできた目で読むと、いかにも彼らしい。日本の伝説を、ギリシャや中国の伝説を引きあいにだしながら愛でる「天の川縁起」、狂歌を集めて解説を加えた「妖怪の歌」、日露戦争下の、ふしぎに穏やかな庶民生活を描いた「日本からの手紙」。「伊藤則資の物語」は再話物語だが、前世に端を発する恋というハーンがずっと惹かれてきたモチーフで、ハーバート・スペンサーにおける死後生存という主題を熱心に論じた「究極の問題」の考察とも通じている。

Internet Archive から原著リンク。

The Romance of the Milky Way and other studies and stories (1905)

Chin Chin Kobakama (1903)

また、白百合大学女子大学「ちりめん本コレクション」

[J0245/220302]