Category: Japanese Articles

出雲の中世

出雲というと、どうしても「古代」が注目されがちである。たとえば、島根県立博物館というものはなくって、かわりに「古代出雲博物館」となっている。一方、近世は近世で、松江城が国宝になったりたたら製鉄が映画になったりと、それなりの認識が存在する。ところが、尼子氏が滅ぼされてしまったこともあり、中世についてはスポットが当たりにくい。

そんな中、出雲の中世のようすを広い視野から描いた一冊が、佐伯徳哉『出雲の中世』(吉川弘文館、2017年)。出雲の独特の事情が、中央政府の揺れ動きと関連しながら動いてきたことがよく分かって興味深い。

関連書としては、『県史32 島根県の歴史』(山川出版社、2005年)の中世部分の記述は、こうした概説シリーズものの域を超えた充実ぶり。特に、井上寛司氏による「杵築大社と鰐淵寺」は、諸国一宮制の一事例として示唆に富む。

松江市に関しては、力の入ったシリーズ『松江市史』の第三巻(2012年)と第四巻(2013年)に中世編が収められ、最新の研究成果が盛り込まれている。

[J0016/170922]

安彦良和自叙伝

安彦良和・斉藤光政『原点』(岩波書店、2017年)。ガンダムで有名なアニメーターであり、のちに歴史漫画に転身した安彦良和の自叙伝。1947年遠軽のハッカ農家に生まれて、弘前大学へ進学。そこで学生運動の全共闘派の活動家に。大学本部を占拠して逮捕、「弘前大学を追い出され、アニメという世界にまぎれこんだ」。

虫プロに入社するがすぐ倒産し、『宇宙戦艦ヤマト』(1974~1975年)制作に絵コンテ担当として参加。1979年、キャラクターデザイン・作画監督を担当して『機動戦士ガンダム』を制作、一躍成功者となるが、1989年にアニメーターを辞めてマンガに専念する。

この世代の(広い意味での)クリエーターたちは、学生運動とのそれぞれの距離の中で自己形成をして、そこで社会批判の観点を磨いてきているという印象。一方、当時の実態としての学生運動の空虚さ馬鹿らしさというものもすごくあって、とくに安彦の心象もあいまって、彼が描く弘前大学の学生運動といえば、絶望的なまでの閉塞感。

「人と人との分かりあえなさ」を主題とした『ガンダム』を、1976年生まれの一子どもがどう受容したかというと、テレビアニメはそこそこに、ただガンプラを作って喜んでいたりしてしたわけだ。

[J0015/170706=E0009]

老年期の性

大工原秀子『老年期の性』(ミネルヴァ書房、1979年)。1979年というと、例の『恍惚の人』(1972年)からしばらく経って、老人問題もひろく認識されてきた頃という押さえ方でいいか。

情熱ある保健婦さんが、老人500人以上に取材した、キンゼイ・レポート的研究。とまあ、簡単には説明できるが、この著者がタブーとされてきたこの主題の調査に苦戦したり奮闘したり、また家族の誤解にさらされた老人たちに理解を寄せて状況の改善を図ったり、むしろそういうところが読みどころ。いまなお一読の価値あり。

[J0014/170706]