Category: Japanese Articles

「鴬を飼わぬ」の話

松江を含む出雲地方の歴史の深さを示すひとつの例。島根県教育会編『島根県口碑伝説集』(島根県教育会、1937年)から、本ではたった三行ほどの「鴬を飼はぬ」というお話。

―― 八束郡法吉村春日の鶯谷は太古宇武賀比売命が下つて鴬となられたと所と伝へられて居る。この故事に依つて法吉村では鴬を飼養しない。又、捕獲しない。現今鶯谷には大きな古墳がある。命の塚なりと伝へられて居る。又字春日では胡瓜の切口が祇園神社の神紋に似て居るとて憚りて之を食はず、又栽培しない。

地元の口碑を集めた『島根県口碑伝説集』、松江城下などは幽霊話など近世風の説話が多いのだが、神が鴬になるという古代的神話がごくさりげなく、生きた口碑として現れるのが出雲風。宇武賀比売は『古事記』にも現れ、貝の神格化と解釈されているらしい。宇武賀比売が法吉の地でウグイスになったという話は『出雲国風土記』に出てくる。上記説話にも言及されているように、その神を祀った旧法吉神社社地(現在は公園として整備)には古墳があり、6世紀前半の方墳と推定されている(発掘調査書、松江市教育委員会『伝宇牟賀比売命御陵古墳』1993年)。小さな神社の境内に古墳があるのも、「島根・出雲あるある」。

今はこのあたり、松江市中心部にほど近い住宅地として「うぐいす台団地」を名のっているけど、その由来をたどれば、「ちょっと素敵だからうぐいす」程度の話じゃないのですよ。

[J0383/230717]

阪口祐介「現代日本における性役割意識の長期的変動」

『社会学評論』74巻1号、2023年、86-103。

1985、1995、2005、2015年実施のSSM調査を用いて、性役割意識の変動の実際と、その変動をもたらした要因を探る。

「女性全体と有配偶者女性では、本人の高学歴化や専門・管理職の増加が性役割意識の平等化に寄与したという説が支持された。一方、男性全体では、未婚化と母親の正規雇用増加が平等化に寄与したという説が支持された。有配偶男性では、母親の正規雇用増加に加えて、妻の高学歴化と専門・管理職増加の説が支持された」(99)

「……そこから浮かび上るのは、高学歴化や女性労働力率の上昇が性役割意識の平等化を単純に帰結するというよりも、学歴・仕事・家族に関するさまざまな社会的地位の構成変化が、ジェンダー差をともないつつ、時には本人以外の重要な他者の影響も反映しながら性役割意識を変化させていくという複線的な経路を通じた価値変容の姿である」(99-100)

「全体としては戦後生まれ以降、世代間で性役割意識に差はみられなかったが(総合効果)、「社会的地位の構成変化による平等化」(間接効果)を統制すると、女性では新たな世代で性役割分業を肯定する直接効果があらわれた」(100)。より具体的には「社会的地位を統制すると、1945-54年出生世代に比べて1965年以降出生世代で性役割分業を肯定する傾向があらわれる……」(98)という。ただし、こうした傾向は、女性全体の値としては、社会的地位の構成変化と相殺されるという。一方、男性には「ゆりもどし」の効果はみられないらしい。

[J0382/230713]

橋元良明『メディアと日本人』

副題「変わりゆく日常」、岩波新書、2011年。

1章 日本人はメディアをどう受け入れてきたか
2章 メディアの利用実態はどう変わったか:一九九五年~二〇一〇年
3章 メディアの「悪影響」を考える:テレビとインターネットをめぐる研究
4章 ネット世代のメンタリティー:ケータイ+ネットの魅力
終章 メディアの未来にむけて

しまったなあ。「若者の意識や行動に対するインターネットの影響」というテーマを考えるのには、この本を最初に読むのが良かったんだな。メディアの影響を捉える視点においても、歴史と現状の双方を扱っている点でもバランスがいい。「ネオファビア(新規恐怖)」の一例である「テレビ害悪論」の議論についても、具体的な先行調査を紹介しながら記述していて、勉強になる。もう10年以上前の本になるけれど、いまでもじゅうぶん薦められる。

〔本ブログで扱った関連書〕
ドン・タプスコット『デジタルネイティブが世界を変える』(栗原潔訳、翔泳社、2009年)
木村忠正『デジタルネイティブの時代』(平凡社新書、2012年)
新井紀子『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社、2018年)
バトラー後藤裕子『デジタルで変わる子どもたち』(ちくま新書、2021年)

[J0381/230708]