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八雲=ハーン関係書

小泉八雲=ラフカディオ・ハーン、日本関係の著書はひととおり読んだことになったかと思うので、関係書とあわせて記事一覧を作成。書籍化されていないテキストはまだ、あるいは、まだまだあるはず。

上のリストはこのブログの記事リストだが、『日本瞥見記』(1894年)は恒文社の上下巻でちょくちょく読むので、逆に記事にしていない。この本、ドイツ語版では IZUMO というタイトルになっているように、明治期の出雲風土記となっている。このほか、代表的な再話物語集『骨董』(1902年)・『怪談』(1904年)もあるが、こちらは講談社学術文庫版が、原案になったテキストも掲載してあって良い。

ウィキペディア日本版では、”A Living God”(「生神」、別名・稲むらの火、1896年)が著書のように掲げられているが(2022年3月時点)、 これは『仏の畑の落穂』の一篇。わかりにくし。

また、以下は関連本の記事リスト。

小泉八雲『天の川幻想』

船木裕訳、集英社、1994年。

天の川縁起
 天の川縁起
 鏡の乙女
 妖怪の歌
 日本からの手紙
 伊藤則資の物語
 究極の問題
虫の研究・蚊
日本お伽話
 ちんちん小袴
 団子を失くしたばあさん
 化け蜘蛛
 猫を描いた少年
 若さの泉.
『天の川縁起』序文(フェリス・グリーンズレット)
思ひ出の記(小泉節子)
解説(船木裕)

ハーン死後、1905年に出版された遺稿集、The Romance of the Milky Way and other studies and stories に収録された文章を中心に編まれた一冊。ただし、The Romance of the Milky Way… の中でも、「事実は小説よりも奇なり」一篇と、「妖怪の歌」のうち「狐火」は収録されていないらしい。せっかくなら全部入れてほしかった。5篇収められた「日本お伽話」はもともと縮緬本で、そのあと、Karma and Other Stories and Essays (1921) に収録されたものとのこと。

雑多といえば雑多な内容だが、ハーンの作品をひととおり読んできた目で読むと、いかにも彼らしい。日本の伝説を、ギリシャや中国の伝説を引きあいにだしながら愛でる「天の川縁起」、狂歌を集めて解説を加えた「妖怪の歌」、日露戦争下の、ふしぎに穏やかな庶民生活を描いた「日本からの手紙」。「伊藤則資の物語」は再話物語だが、前世に端を発する恋というハーンがずっと惹かれてきたモチーフで、ハーバート・スペンサーにおける死後生存という主題を熱心に論じた「究極の問題」の考察とも通じている。

Internet Archive から原著リンク。

The Romance of the Milky Way and other studies and stories (1905)

Chin Chin Kobakama (1903)

また、白百合大学女子大学「ちりめん本コレクション」

[J0245/220302]

Paul C. Rosenblatt, Bitter, Bitter Tears

Paul C. Rosenblatt, Bitter, Bitter Tears: Nineteenth-Century Diarists and Twentieth-Century Grief Theories, University of Minnesota Press: Minneapolis, 1983.

19世紀の日記から死別悲嘆の様子をたどって、グリーフ・ワークの理論を再考するという書。まだ全体をちゃんと読んではいないのだが、「絆の継続」モデルを主張する初期の業績といえるのかな。以下、目次を掲げる。


第1章 日記から死別悲嘆を研究する
 なぜ日記で死別悲嘆を研究するのか
 サンプル
 日記作者は変わった人だろうか
第2章 日記は死別悲嘆の真実を伝えているだろうか
 喪失に関する最初の記事
  後からの理解
  日記作者の、喪失が生じた時点の理解
 死別悲嘆のパターン
  いつ日記作者は喪失について考えるのか
  死別悲嘆の機会
  理由のなさそうな喪失への言及
 結論:データの妥当性
 結論:死別悲嘆のダイナミクス
第3章 グリーフ・ワークの理論
 フロイトの「喪とメランコリア」
 グリーフ・ワークの失敗
 グリーフ・ワークの諸段階の理論
 想起理論とグリーフ・ワーク
 日記とグリーフ・ワーク
第4章 死と分離の予期
 予期の段階では何が起こるか
 日記データにおける「予期」と死別悲嘆
 要約と結論
第5章 健康、医療的ケア、死別悲嘆
 幼児や若い子どもの死
 母親の死
 終末期ケアと死別悲嘆
 要約
第6章 死や別れに対する悲嘆の時間経過
 死や別れに対する悲嘆の経時変化
 喪失への言及の経時変化
 死と別れの比較の含意
第7章 別れ:遺す者と遺される者
第8章 いっそうのグリーフ・ワークを必要とする死別悲嘆
 関係の近さ
 同居
 関係の持続
  兄弟の死
  子の死
  親の死
  配偶者の死
  関係の持続に関する結論
第9章 死別悲嘆をコントロールする
 感情コントロールに対する日記作者の関心
 死別悲嘆をコントロールする動機
 死別悲嘆をコントロールする方法
  一貫しないしかたで感情と関わる
  自己教唆
  故人を思い出すのを避ける
  故人を認知上最小化する
 感情コントロールは効果があるか
 コントールのコスト
 コントロールにおいて繰り返される死別悲嘆の効果
第10章 死別悲嘆と家族システム
 変化への抵抗
  故人の夢と、存在の感知
  心霊主義
  祈り
  天国での再会
  行動の導きとしての故人の希望の援用
 故人の代替
  伴侶の仕事をするための誰かを見つける
  代替としての神
  再婚
  代替と親子関係
  子の命名と代替の追求
 所有物の継承に関する議論
 泣くための肩と、援助する人
 要約と結論
第11章 グリーフ・ワーク理論や諸理論の修正へ
 奮闘
  断絶と感情コントロール
  断絶の認知的源泉
  奮闘と段階的撤退
 グリーフ・ワークの経時変化
  予期
  年齢と思い出への反応
  記憶と希望のダイナミクス
 発達理論、象徴的相互作用理論、記憶理論
 何が信じられるのか
付録A 日記を扱う
付録B 日記作者
付録C 統計について

[J0244/220228]